子どもに
「家の思い出」を
遺したくて
家具とアートを大事にしようと思った。
夫婦と8歳の娘の3人がそれぞれに選んだ3つのチェアと、丸テーブル、それから、知人の作家に創作をお願いした鹿と森の絵織物だ。
リノベーションでSさんは、それらが映える空間──というより、生活の中にしっかりと組み込まれた住宅をつくろうと考えたのだ。
両者の違いを挙げるなら、魅せられたのが「モノ」なのか「モノを通したコト」なのかで、Sさんは後者である。
「高齢になってからの子どもなので、僕らが逝っても寂しくないよう思い出になる家具や絵を遺したかったんです」
Sさんのいう思い出とは、育った家であり、家族の時間だ。とりわけ、子どもが子どもである間。その時間は思ったより少ないと気づかされた。
「たまたま見たSNSに、“子どもに遊んでもらえるのもせいぜい10年”とあってハッとしたんです。遊んであげているつもりの親は、子どもが友達を優先する年頃になって初めて、実は逆だったことを知る、と」


パーケットフローリングの張り方はSさんのこだわり
